ミーハーになるぐらいなら私死ぬから

好きな自伝はグミ・チョコレート・パインだし、好きな漫画家は浅野いにおだし、00年代のバンドが好きだし、好きな歌手はカネコアヤノと椎名林檎だし、好きな映画はリリィシュシュのすべてだし、好きな脚本家は坂元裕二だし、好きな場所は下北沢だし、本当はヘッドフォンをしてショートボブにだってなりたい。

そうでもしないと個性をアピールできない。趣味で周りと差をつけなければ私には何にもない。

典型的なサブカルクソ女、とでもいうのだろう。

サブカルチャーを愛し、サブカルチャーに愛された女……のようにみせて、結局はサブカルが好きな自分が好きなだけで、正直そこまで詳しくない。これを俗にサブカルクソ女、というそうだ。

しかし、そう言われてしまうとぐうの音も出ない。

自分が学年で1番音楽に詳しくありたいし映画も1番好きでありたい。常にクラスの人間に、ミーハーには負けてられないという気持ちで戦いをふっかけている気分だ。わたしが1番音楽に詳しくいなければいけないので、知らない名前が出てきたら全然知ったかぶるし、見たことない映画の話題でも見たと言う程で話す。わたしが1番詳しくなければいけないのだ。学年で、学校で、1番私が”わかる”人でなければいけないのだ。

本当にめんどくさいプライドだと自分でも思っている。しかも何が1番めんどくさいって、自分と同じ趣味の人がいたらそれはそれで嫌なのだ。めんどくさそうな奴だな、としか思えない。関わらないようにしとこ、としか思えない。

自分がめんどくさい人間だなんてこと、自分が1番わかっている。自分が1番こんな自分が嫌いなんだから、お願いだから許してほしい。

KPOPを聴く人間や、最近流行りの邦ロックを聴く人間、人気の恋愛映画を見る人間を小馬鹿にしているようで、心の奥底では本当は羨ましいのだ。そうすることで自分の中で渦巻くどす黒いなにかを鎮めているだけで、本当は私だってアイドルにキャーキャー言いたいし、流行りの曲を聴いてみんなと共感し合いたい。

しかしその感情を認めてしまったら私にはもうなにもかもがなくなってしまう。そうなってしまった暁には私は生きる気力なんかゼロになってしまうだろう。

よく知らねぇ女がなんとなく死んで嫌な思いをしたくないのであれば、こんな超絶めんどくさいサブカルクソ女のことを許してほしい。