透明少女にて

 

これがJKか〜って毎日思う。


私の思い描いていた女子高校生とは、もっとギラギラとしていて、無敵だったような気がする。


放課後は友達とクレープを食べたりタピオカを飲んだりして、それでいて太らない奇跡の体。

常にインスタのストーリーの完成度に囚われ、キラキラとしたものに目がない。

肩にかけるスクールバッグには、ディズニーのお土産のキーホルダーや、その他諸々の流行り物のぬいぐるみで色鮮やかに彩られている。

イベントごとの準備は他の人に任せ、本番になったら急に主役となって全力で楽しむ。

電車では常に周りに緊張感を与え、男の隣に座っただけでラッキー、と思われる。


そんなJKに、私は強い嫉妬心を抱いていた。

それと同時に、16歳になれば自然と私もそうなるものだろうと思っていた。


しかしいざなってみたらどうだろう。


昼休みにも、授業と授業の合間の10分休憩でさえも、イヤホンを着用し、1人静かに本を読んでいるだけの今までと全く変わらない根暗なろくでもない女ではないか。当たり前のように、高校生になったとて今までとなんら変わりもしなかった。


結局私は、”じゃない方”になってしまった。


放課後遊びに行く友達などひとっこひとりおらず、糖質制限をしているはずなのにぶくぶくと太っていく体。

プリクラを撮ったことも、文化祭や体育祭で仲間と衣装を合わせたり、グッズを作ったりすることもないため、1ミリも動いていないインスタのアカウント。

オタクグッズしか持っていないために何にもつけることのできないリュックサック。

文化祭の準備では、周りの人間が大勢で買い出しに行く中誘われもせず、人のいない教室で涙を流しながらひたすら段ボールに色をつけていた。

みんながインスタのDMやLINEでクラスの男子と駆け引きをしている中、私はまだみんなの名前を覚えることに必死だ。

俗にいう1軍女子が怖すぎて、まともに会話すらできず、グループワークの際には緊張で動悸が激しくなる。

常に周りの視線に怯え、どこにかもわからずに帰りたいという感情で頭が埋め尽くされている。


これでいいのか、私のJK人生。


いやいいわけないんだけど、いいわけないんだけど、正直に言ってしまうともうどうしようもない。

根っから腐ってしまっているんだ。私は。

生まれた時から全てがきっと間違っていたんだ。

この16年間の私の人生、全ての重要な選択を間違えてしまったように思える。

私はみんなとは違う世界に生きてるんだ。みんなと同じようにはなれないんだよ。どう頑張っても。

そう思わないとやっていけない。


私が本当になりたかった女子高生は、今にも消えてしまいそうな雰囲気を纏う、向井秀徳的にいうと透明少女ってやつだ。


明るくて、誰にでも優しくて、クラスの中心としてみんなに好かれてて、でもどこか儚げなオーラを持っているような女の子。

最近の流行りにも詳しくて、イマドキの女子の会話にもなんのつっかえもなくついていけているのに、偶然置いてあったスマホにはフィッシュマンズNUMBER GIRLを聞いた痕跡が残っていて、それを見た男子が見てはいけないものを見てしまったようでドキドキしてしまう。


そんな女子高生に、私はなりたかった。


そんな女子高生に、本当はずっと憧れていた。


もう二度と叶わない夢ではあるけれど、いまでも私の作ったこの構想に、惚れ惚れとする夜がある。


そんな時に見る夢は、決まってこんなものだ。


サラサラのロングの髪の毛を風になびかせる1人の少女が、綺麗におり揃えた制服のスカートをひらひらと揺らし、時折こちらを振り返ってなにかを伝えようとしている。

何を言っているのか、私にはうまく聞き取れないけれど、晴れやかな笑顔がとっても透き通って見える。


もしかしたらあの子は、違う道を歩んだ私なのかもしれない。

私が怠惰な生活を送っている間に、必死に何かを掴んだ別の世界の私なのかもしれない。

 


でもきっと、多分きっと、全てが透き通って見える

 


たとえばあの子は、私が思うに

 


たとえばあの子は透明少女